〜夢〜
「ねえ、夢って何?」
突然の少女の問いに眼帯をした青年は応えた。
「……夢?イヴは見たことないのか。」
「うん。」
コクンと頷く少女に、青年はベンチに腰を掛けてから丁寧に言った。
「あのな、夢は寝ている時に見るものなんだ。現実にはありえない様な事が起こる世界だし、自分が自分でない事もある。」
「???」
少し首をかしげてから閃いたように少女は言った。
「『にじゅうじんかく』みたいな物?」
少しキョトンとした表情で青年は考えた。
「う〜ん。まあ、違うけど、似たようなものだろうな??」
そして青年は鞄からさっき買ったばかりのアイスを取り出して少女に手渡した。
少女も青年の隣に座り、袋を開けた。
「ねえスヴェン。夢の中ってどんなになってるの?」
「……そうだなぁ。その時々によって違うんだけどな。まるっきり嘘だと思える世界の場合もあるし、
例えば『世界が海の中に沈んでて、人にヒレがあったり』とかな。」
「造られた人達??」
表情に暗い影を落としながら問い掛ける少女。鞄の中を探りながら話す青年の動きが、
一瞬止まったかに思えたが、おもむろに双眼鏡を取り出し別に変わった様子も無く話し続けた。
「いや、そこまでは……。『例えば』だしな。あとはやたらリアルな夢も見るな。トレインがおねしょをする夢だって見たことがある。」
「『リアル』?」
少女はおかしそうに微笑し、アイスを食べ始める。青年はベンチの背に体重をもたれかけた。
「まあ、夢を見ないイヴがうらやましいぞ、俺は。」
「なんで?」
双眼鏡を覗く青年の横顔を少女は覗き込んだ。
「結構振り回されるものだからな。実際にあったら嫌な夢もあるし、怖い夢も少なくない。」
「どんなの???」
「……それは秘密だ。」
「……。」
無表情ながらも面白くなさそうに少女は手元のアイスを見つめた。
のんびりとしたそよ風が吹き、音を立てて木の葉が舞う。そして少女は静かにつぶやいた。
「悪い事なんか起こさせないよ。私が力になって……スヴェンも、守る。」
「何か言ったか?」
青年は相変わらず双眼鏡を覗いたままだ。少女は小さく息を吐いて青年に言った。
「……今度、銃も教えて?」
「ああ、いいとも……おっ、トレインが動いたぞ、作戦開始だ。」
振り向いて少女に声をかけると、青年はすぐに鞄を抱えて走り出した。
少女は、自分のいった言葉に少しうつむき、照れながらも青年の後を追った。追い風が彼女の身体を軽くする。
そして、春風の気持ち良さからなのだろうか。前を走る青年の肌もまた、ほんの少し紅潮しているように見えた。
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