■ 2007/10/01 山下清の記憶力

今、絵を描いている途中でふと、「サイトの更新でもしておくか?」と思い立ち、実際に更新を始めてみました。本コーナーは、自分自身の備忘録(びぼうろく:忘れた時の用心に書きとめておくノート。手控え。忘備録=広辞苑)の役割もあったりします。

その昔、PCなどない時には、それこそノートを常に傍らに置き、ちょっとでも思いついたことがあると、手を止めてノートに書き込んでいました。今はそのノートがPCに替わったようなものです。

さて、今日ここで書き留めておきたいことは、芸術の秋にちなんだ絵の話、というより、その創作方法につながる山下清の話です。

現在、東京・上野の上野の森美術館では、山下清の展覧会「時代をあるいた放浪画家・山下清展」が開かれています。開催期間は「9月21日〜10月9日」と短いですね。私はそれほど関心がなかったのですが、すぐに終わってしまうとなると、何かの機会に観ておこうかな、という気にもなったりします。

主催は、産経新聞と日本美術協会、上野の森美術館ですか。フジサンケイグループといえば、その昔、芦屋雁之助あしやがんのすけさんの清役で人気を博したテレビ・ドラマ『裸の大将放浪記』「YouTube>"野に咲く花のように" 演奏 "むじか・とれぇす"」)を放送していたのもフジテレビ系列です。

そのドラマのシリーズが今年、同じフジテレビによって復活しました。私は昔のシリーズはよく観ていましたが、新シリーズを観るつもりはありません。ともあれ、その新ドラマの宣伝の意味も兼ねた展覧会であるのなら興醒めです。が、山下清は山下清です。

ボ、ボ、ボ、ボクは…テレビのドラマは、か、か、関係…ないのだな…。ボ、ボ、ボ、ボクは…ボク…なんだな…。

昨日の産経新聞・一面コラムの「産経抄」でも、山下清が取り上げられています。それを読んでいたことが、今日ここで取り上げようと思ったきっかけとなりました。その中に、次のような記述があります。

清は(中略)、スケッチもほとんどやっていなかったという。実際には放浪を終えた後、記憶をもとに旅先で見た風景をキャンバスによみがえらせていたのだ。

実際そうらしいですね。

ここからは絵の描き方の話に絡めておこうと思います。絵、中でも写実的な絵を描く場合、実物を見ながら描くのがいいのか、そうでもないのか、という話です。私はこれまで、自分の眼で視て、視て、視て描くのが“上等”だと考えてきました。しかし、考え方が変わりつつあります。

ひとつには、自分の眼に忠実であろうとすればするほど、実物が持つ力が圧倒的であるため、それに二次元の作品が追いつかず、描いていて苦しくなります。いや、これは技量に劣るσ(^_^)私に限定された話かもしれません。

たとえば色ひとつ取っても、実際に描いてみればわかると思いますが、難しいです。私の場合、自分を鏡に映して、それをカンヴァスに写し取る『自画像』を描くことになるわけですが、前に色をつけておいた作品に後日加筆する場合、そこでまた塗るべき色に迷い、考えに考え、困り果ててしまうことの繰り返しです。

そんなことが続いたある日、「ええい、ままよ」と鏡を片付け、何も見ずに続きを描いてみました。これがなかなかいいのですね。いつもいつも鏡に映る自分自身を視続けてきましたから、自分の姿は頭に焼き付いています。あとは、それを“手がかり”にしてカンヴァスに絵具を置いていくことになります。

頼りになるのが記憶だけですから、おそらく、写真ほどの正確さはないでしょう。しかし、写真と比べて優劣をつける必要などないことに気づきます。また、悩みの種であった色も、迷わなくてもいい分、必要以上に濁らせてしまう心配もありません。

そんなことを考えていた昨日、産経の「産経抄」に山下清が実践した「記憶」で表現した製作方法について書かれていたため、ピンときたのでした。

自閉症の一形態に「サヴァン症候群」というのがあります。山下清がこの症候群に合致するのかどうかはわかりませんが、驚異的な記憶力がそれによるものであるとすれば、合点がいかないこともありません(「YouTube>Savant Drawings」)。

「オマハの賢人」といわれる世界的な投資家ウォーレン・バフェット「YouTube>Warren Buffett MBA Talk - Part 1」)について書かれた本を数年前に読みましたが、それによれば、バフェットはたとえば大学の教科書などは、1回目を通すだけでそこに書かれていることが細部に至るまで完璧に記憶できたそうです。それが、数字に関わる記述の記憶にだけ有効だったかどうかは忘れましたが(※私の記憶力はかなりレベルが低いです( ;^ω^))、その驚異的な能力があったればこその偉大な投資家なのでしょう。

【本日の豆天才】:あれは何年前になりますか、日本テレビで韓国の天才少年が紹介されました。今、ネットで調べてみましたが、おそらくはソン・ユグン君で間違いなかろうと思います。この天才少年で強く記憶に残っているのは、長嶋茂雄さん(→ 本サイト内関連ページ)のあの現役引退セレモニー(「YouTube>1974年長嶋茂雄(巨人)引退セレモニー」)のビデオをたった1回観ただけで、長嶋さんの引退挨拶を一言一句間違いなく再現できたことです。ちなみに、ユグン君は日本語は全く勉強したことがないそうです。もしかして、長嶋さん自身、自分の挨拶をビデオを観ずに再現できないかも(^3^)

話を山下清に戻しますと、これは遥か昔に新聞か雑誌に載っていた話の記憶ですが、清の記憶力は、たとえば体重計に載って体重を量った場面さえも正確に記憶しており、その時の部屋の内装から体重計が示す針まで、忠実に記憶をよみがえらせることができたそうです。

その清の記憶力を私も欲しいと思いました。

その能力さえあれば、カメラの機械的な定着力に一切頼ることなく、いつか見た情景を二次元に表現できます。

おっと。ちょっとメモしておくつもりが、長居してしまいました。

絵具で何かを描くという行為は、頭で理解できただけではダメです。何の役にも立ちません。その理解を、自分の眼と腕で実際に実現できなければなりません。

芸術の秋。観るは愉し、「する」は悩み深し、です。ひとたび脳裏に焼き付いたことが、生涯消え去ることないことが、果たして一個の人間を幸せにするかどうかは議論の分かれるところでしょうが。