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バスは、丘をいくつも越えた。赤土の丘をいくつ越えても、また丘が続いていた。私の前の座席の老婆は、朝からずっと誰にとでもなくしゃべり続けていた。乗客は一応話を聞いてやるのだが、ほどなくうんざりしてしまう。すると彼女は今度は別の乗客を相手に話し始める。そうこうしているうちに話す相手がいなくなってしまい、そんなわけで誰も話を聞いてくれなくなってしまった老婆は、最後に私に目をつけたのだが、私が片言のポルトガル語しか解さないことを知ると、さっさと前を向きいったんは静かになったのだが、やがて誰にというわけでもなく話し始めたのだった。前日はとても静かな人だったのに。
彼女が何についてしゃべっていたのかは最初は分からなかったが、彼女が私にもくれた一枚のしおりでだいたいのことが分かった。彼女は、自分が入っている宗教団体の勧誘をしていたのだった。ブラジルは、人種の紛うことなき柑禍であると同時に、世界中のあらゆる宗教の見本市会場でもあった。なんでもある。
赤くただれた怪獣の喉のような赤土の切り通しをバスが抜けた時だった、右側に続く斜面に何軒かの朽ちた土壁と赤い瓦の小さな家が見えた。やはり人影は無かったが、庭に痩せこけた数匹の山羊がいた。そこから道路と平行に急な坂を下ったところに三角形の小さな谷があり、底は池になっていた。真っ黒なマッチ棒のような体をした男の子が3人、すっ裸で交互にその池に飛び込んだ。おそらくその村の唯一の水源でもあろうその水は、藻が繁殖して深緑色をしていた。子供たちの無邪気さは救いだったが、いずれこの村もそう早くない将来に誰もいなくなるだろうと思われた。
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