最高所の野湯へ


1月2日−3日




正月だというのに家族を捨てて山に行っちゃいました。
お目当ては日本最高所の野湯「本沢温泉」。北八ヶ岳の2150mに位置し冬季はマイナス10℃以下になるようです。

「一度浸かったら寒くて出れない」 「体を拭いてるそばからタオルが凍る」

メッチャ面白そうでしょ?(喜)

私の呼びかけに応じてくれた勇者は幕営ジャンキーのK海さんと、今年テントを買って雪上キャンプは初めてのRockyさん。
この3名で突入なのだー!




準備編

小屋に状況を聞くと「正月はマイナス10℃を想定してください」とのこと。これなら今持っている装備でしのげそうだ。
過去の雪上幕営の経験でショベルだけは欲しかったので、ブレードがレキサンポリカーボネートの超軽量ショベル「ライフリンクIIIDXS(510g)」を購入して装備は万全・・・かな?

ザックの中身

@テント:マウンテンハードウェア Aシュラフ:ノースフェイス+マウンテンイクイップメント、ゴアシュラフカバー:モンベル、ダウンピロー:フェザーフレンズ、ダウンソックス:イスカ Bマット:リッジレスト、銀マット:2m厚100×200、NASAシート Cザックカバー Dクッカー、スプーン&フォーク、ストーブ、カートリッジ、バーナーシート Eゴアグローブ:モンベル、クランポン:カンプ、バラクラバ:パタゴニア、ネックウォーマー:タートルファー、ゴーグル:スワンズ Fマップケース、コンパス Gダウンパーカ:マウンテンハードウェア、化繊インナージャケット:パタゴニア、ダウンインナーパンツ:モンベル、ゴアレインウェア:フォックスファイヤー H極薄フリースジャケット&パンツ:アイダー、ウールアンダーシャツ:パタゴニア、ウールソックス:スマートウール、フリースソックス:モンベル Iショベル:ライフリンク Jドライフーズ、デジカメ、iPod、ヘッドライト:ブラックダイヤモンド K洗面具、タオル、エマージェンシーキット、ロールペーパー、ビニール袋、メタ、ナイフツール、ガムテープ、細引き


雪山で快適に過ごすためのギアを紹介しよう。ストイックな山屋さんから怒られそうだが・・・(汗)

ダウンソックス
こいつがあるとないとでは天国と地獄ほどの差になることがある。
ダウンの保温量が足りない場合はぜひとも持ちたいギアだ。

ダウンピロー
フェザーフレンズ製ダウン枕。雪上ではエアー枕は使い物にならない。ダウンはふわふわ暖かくて気持ちいいのよねー。


これらのギアにテルモスと行動食を追加してザックの重量は14s。食材やザイルを外すと軽くなるわなぁ。




突入編


さてさて出発だ〜
4:00にK海さんと横浜を出発。途中にRockyさんをピックアップして中央高速で現地に向かいます。

141号を稲子湯方面に曲がったところで4輪にチェーン巻き。
効果は絶大で小屋推奨の駐車場所よりもはるかに奥まで車で入れてしまいました。軟弱だよね〜。下山する人たちの視線が痛かったっす(汗)

そうそう、雪山に車で行くときは整備も大事だよん。クーラントが薄まってると不凍液を入れても凍る場合がありますぞ。


駐車場所で湯を沸かし甘めの紅茶をテルモスに入れて行動開始、10:00。

赤岳から下山してきた人とすれ違ったので話しを聞くと、昨日の山頂は猛吹雪でマイナス23℃だったそーな(驚)
エキスパートだけに許される極限の世界ですな。

前日の降雪でさらさらのパウダースノー。
カラマツやコメツガの森もふわふわのわた帽子をかぶり、そのバックには抜けるような青空と八ヶ岳の威容。
ときおり風が吹くと枝の雪がスノーダストとなって煌めきながら舞い落ちてくる。も〜最高!

トレースがついているのでアイゼンも必要なく、キュッキュと雪を鳴らしながらマイペースで歩く隊員たち。


私の行動中のウェアは
上半身:キャプリーン2+ポイント5+R2JKTとパタゴニアのレギュレーターシステム
下半身:ポイント5タイツ+ストレッチパンツ
足元:スマートウールのマウンテニアリングソックス+サロモンのヌバックシューズ+ゴアロングスパッツ


パタゴニアの提唱するレギュレーターシステムで中核をなすR2フリースJKTはやっぱ名品ですな。立ち止まったときや日陰でも寒さを感じず、動いてるときは適度に風を通すので暑苦しさも感じない。上にシェルを羽織れば保温力もある。軽いし稼働部は伸びる。静電気も初期に比べると格段に減ってますよね。多用途に使えるので自信を持ってお薦めできる一品です。

12:30 キャンプ場到着

先住民のテントは3張り。年末年始が荒れたから少ないですねー。

K海さんがツボ足で奥まで入り、適地を見つけた。


K海さんのトレース跡を除雪&圧雪しながらルート作り。
Rockyさん、スパッツはロングを買いましょうね。凍傷になっちゃいますよー。


ちょこっと登ったところにはふかふかの雪原があった。ここが我々の幕営場所だぁ〜(喜)


設営

キャンプ場の積雪は80pくらい。いくら踏んでもサラサラで圧雪できないので、除雪をしてから圧雪をした。でも足元から雪が逃げるだけで、いっこうに雪が締まらないよ〜。

ショベルは大活躍でした。つか、なかったら大変だったなぁ。


設営中に雲がかかり粉雪が舞い始めた。午前中に晴れると午後は雲が出ることが多いよなぁ。
濡れる雪ではないけど氷点下だからね。レインJKTを羽織って整地を続けました。


根城が完成!

さらさらでスノーブロックが作れないから除雪した雪で囲いました。これだけ深いと風の影響はまず受けないだろう。

雪上の幕営は下からの冷気をいかに遮断するかがキモ。
銀マット(2o厚)の銀色の面を下向きに敷いて、その上にNASAシートとリッジレストで寝床は完成。


Rockyさんのテント(左)は国内山岳テントで実績1のエアライズだ。

K海さんは国内冬季実績ゼロであろう新製品U.L.ドームシェルターでマイナス10℃以下に挑みます・・・って、商品説明に「冬季には使用しないでください」と書いてあるよー。大丈夫なの?生地がペラペラで中も透けてるし(喜)


何度もアルプス縦走や離島で幕営しているK海さんによると、夏季の森林限界上と冬季に使うべきギアだそうです。濡れにはまったく弱いので、雨が降ったら小屋泊まり。冬季は雪しか降らないから、通気性のない生地の場合、換気(ベンチレーションが結露&凍結で塞がるかもしれない)だけ気をつければ大丈夫だろう、という判断みたい。小さいし通気性がない生地って意外と暖かいんだって・・・これで挑むなんて勇気あるよなぁ・・・翌朝が楽しみだ(喜)

ギアの目玉はこれだ!

キッチンテントとしてK海さんが自作した
「クリスタルピラミッド1号」


四隅を十字に縛った割り箸ペグを埋めて麻紐で固定。翌日は固まって掘り出すことができないかもしれないのでローインパクトな材料を選んでます。四隅が固定できたらストックを2本ジョイントしてセンターを立ち上げます・・・いつ破れるかと期待(喜)してましたが、ビシッとテンションが効いて美しいピラミッドが完成したよん・・・翌朝まで保つかなぁ?

素材はウルトラライトな人たちが注目している「農ポリ」、すなわちビニールハウス用の農業フィルムです。
厚さは0.03oで超軽量。価格は100mロール(使い切れん)で3000円台。専用の補修テープを使えばタープ、シェルターなど自由に設計制作できるよねー。今回はストックで立てるピラミッド型に挑戦してくれました。四隅と各センターにグロメットを付けて、貼り合わせ部位と裾の底辺を補強のためテープを貼ってあります。重量は約500gと市販品の半分以下ですな。

設営完了

3張りのソロテントの中心にピラミッドシェルター。
レイアウト、絵としても完璧だーね(喜)

本当はシェルター内部の雪を掘り下げてイス・テーブルを造作し、縦雪洞型ともいうべき形にしたかったんだけど、積雪が足りなかった。これは次回だね。


設営は思いのほか時間がかかった。楽しかったからいいけど終わったのは2:30だ。ショベルは2本あったほうがいいかも。
昼食のおにぎりが凍り始めたので小屋で暖かいものを食べることにした。


チェックイン

キャンプ場から2分くらい登ったところにある小屋でキャンプ場利用料・入浴料・夕食代・暖房費を支払って昼食のうどんをオーダー。幕営するのに2食も小屋に頼るなんて軟弱だわ〜。






入浴編

いよいよ、メインイベントの野湯だぁ〜!

小屋の外にあった温度計はすでにマイナス8℃。
二人の背中も丸まってきましたね。

小屋から5分ほど登ってから谿に下ると・・・
あったぞー! 


ビールを握りしめ満面の笑みで湯に浸かるRocky隊員

先客2人に挨拶をしてK海さんも身を沈めた。
二人とも寒さで慌てて入っていったけど、出るときの手順を考えて衣類を整理してないよん♪

後で訪れるであろう惨劇を想像して、ほくそ笑みながら衣類を丁寧に脱ぐ私なのであった(喜)


で、入ってみたら、最高ですわ。雄大な景色、秘湯の雰囲気と硫黄の臭いがプンプン、浴槽は上部だけは木造ですが中は岩と砂利で隙間から湯が沸いて湯の花も沈殿しています。
唯一の難点は
ぬるいこと!これじゃぁ出れないワケだぁ!!

缶ビールに手をつけない二人に「飲まないの?」って聞いたら「これ以上体を冷やしてどうする!?」って答えてましたよ(喜)
熱燗が正解でしたね〜。

外気温はさらに下がっているようで
湯気で濡れた髪の毛がバリッバリに凍ってます(涙)

さてさて、1時間が経過・・・先客から順番に脱出開始。
ものすごい勢いで体を拭いてますが、体温をあっという間に奪われるようで「ぐご凵∵ゞ∋」と意味不明の叫び声をあげてます。
もう大爆笑!!・・・2人目も同様で、共通してるのは「寒い〜」ではなく「痛い〜」を連発してること(喜)

お次はRockyさんの番だ。彼は何故か?雪の上で素足で着替えるという荒技に挑み、「つ、冷てぇ〜」を連呼しながら足踏みをしながら体を拭いて着替えてました。
バラエティー番組の罰ゲームでもこれほど酷い絵は見たことないぞ。もう笑いすぎて腹が痛いっす。

K海さんはRockyさんを見てスパッツを敷いて着替えてましたが、拭くという作業をほとんど飛ばして着てましたね。股間の大事なモノが凍傷にならないか他人事ながら心配です・・・。

最後が私の番だ。用意周到な私は一気に着れるようにパンツとタイツ、キャプリーンとポイント5を重ねたまま脱いでおいたのだ。どお、賢いでしょ?・・・ところが・・・パンツ&タイツを同時に足を通して上げてみたら、パンツの片方に足が通ってなかったのよ〜(泣)
慌ててもう一度全裸になって1枚づつ着ようとするものの、すっかりリズムを崩して思うように事が運びません。裸の上半身は凍りつきそうで心臓が痙攣を起こしそう・・・40数年生きてきて
最も死を身近に感じた瞬間だったかもしれません(怖)

なんとか全てを着ることができ生還を果たしました!

足元に放り投げたタオルは板のように凍ってましたよ。
日中の最高気温が氷点下だから、下界に降りるまで溶けることはないんだよね。
冬山、恐るべし!

撤収と同時に日没を迎えた。ヘッドライトはいかなるときも持ってないと、ね。
さぁ夕食だー、小屋へ戻るぞ。


小屋の温度計はマイナス12℃。
風呂上がりなのに薪ストーブにかじりつく隊員たち。

夕食を小屋でとったのは正解だった。
腹をいっぱいにすれば体も温まるからねー。


食事を終えてピラミッドシェルターに戻ったのが19:00、就寝の準備なのだ。
テルモスの中身が凍るから暖めなおしたり、お湯を沸かして入れたり・・・湯たんぽ替わりにもなるんですわ。


厳冬期にはネオプレーン素材のカートリッジカバーを用意したい。雪上に直接置いてもくっつかないし、ガスの冷えも緩和するので燃焼効率が落ちにくくなります。

ピラミッドの中は湯気に包まれ暖かいよん。
右はダウンパーカ+ダウンパンツ+バラクラバで武装した管理人です。


「クリスタルピラミッド1号」はシースルーだから景色が楽しめていいですねぇ・・・RockyさんとK海さんはウォッカで体の内部を暖めながら星空を眺めてました。

就寝

みんなはしゃぎすぎて疲れてたんだねぇ・・・20:00にはテントに潜り込みました。

私の就寝着
上半身:パタのウール2+ポイント5+アイダー極薄フリース+R2+マイクロパフ
下半身:ポイント5タイツ+アイダー極薄フリース+モンベルダウンインナーパンツ
足:ウールソックス+フリースソックス+ダウンソックス


体で寒さを感じる場所って個人差が大きいよね。私は足の指先が弱点でここが冷えると痛くなって寝れないんですわ。
フリースソックスとダウンソックスの効果は抜群で心地よく眠ることができました。

アンダーウェアについても感想を述べよう。
行動中は化繊のベースレイヤーキャプリーン2を着ていましたが、風呂を出てからは新しく買ったパタゴニアのウール2を着用。寝ているときは、間違いなくウール2のほうが暖かいですわ。化繊特有の冷気がまとわりつく感じがありませんから。
帰路でも比較のためにウールを着てみました。ザックを背負った背中は少し汗をかいたけど、冷たいと感じることはありませんでした。濡れても保温性があるのがウールの長所だな。ただ、ドライな肌触りを好むなら化繊がいいでしょう。
冬季の山歩きならウール、発汗するようなウインタースポーツには化繊がベスト!というのが私の使用感でっす。
でもねー、パタゴニアさん、いくら塩素処理をしてないからって肌着でこの値段はないんじゃないの?!

K海さんはダウンで小技を使ってました。
ダウンシュラフの保温量をまかなうため、ダウンジャケットをシュラフとシュラフカバーの間にレイヤリングしてました。
シュラフカバーの内側って外気の温度とシュラフ内の温度がせめぎ合う部分だから結露する可能性もあると思うんだけど、翌朝でも濡れてなかったみたい・・・何度か検証してもらいたい裏技ですね。







翌日編

深夜1:00におしっこしたくてテントを出た。晴れてるからいいけど、荒天だったら面倒なんだよなぁ・・・そんなときのために携帯トイレを試してみたかったのだが、けっこう嵩張るんですよね。
K海さんは北アでテントのベンチレーションから放水してるのを目撃したことがあるそうな・・・いったいどんな体勢でしてるんじゃろうか?ブリッジをしてるとしか考えられないよな(喜)

1:00には眩いばかりに星が輝いていた。こりゃ朝は冷え込むぞ。余裕でマイナス15℃は下回りそう。いったいどれだけ気温が下がるか楽しみだ〜。
いったん外の空気を吸ったら目が冴えてしまったので、iPodのスイッチを入れたが動きませんでした。やっぱバッテリーが冷えて充分に発電しないんだろーなぁ。

最も冷える日の出前の寒さを体感してみたかったのだが、目覚めたら7:00だったよん。

テントの内側は薄〜く結露して凍ってました。ベンチレーションは3割くらい塞がってました。


朝方、風の音で何度か目は覚めたんだよね。上の方はかなり風が強かったんじゃないかな?ごぉぉぉ〜というものすごい音が響いてましたから。でもね、テン場は樹林帯の中だし掘り下げたから、風に叩かれることはありませんでした。

夜中にテントの上に張り出した枝から数回雪が落下してきました。大きな氷のような塊が落ちたらヤバイよね。テント張るときは気をつけないといけないな。

シュラフカバーの上にかけていたダウンパーカにはベンチレーションから吹き込んだ雪や、テントから落ちた氷がついていた。ダウンは濡れたらアウトだから、撥水の生地を使ったウェアのほうが気を遣わなくていいね。


小海さんのU.L.ドームシェルター

結露は想定内、つーか、予想よりはるかに少なかった。前後のベンチレーションがうまく機能したようですね。


クリスタルピラミッド1号も予想に反して(喜)立ってましたー!。
ピラミッド型ってよく言われるように風に強い(風をうまく逃がす?)構造なのかな。

ピラミッドでくつろぐK海さん。
ダウンJKT+ダウンパンツ+ダウンソックスで武装してます。

Rockyさんはカチンコチンに凍ったおにぎりをドライフーズのリゾットにブチ込んだ朝食。私はドライフーズのビーフシチューとロールパンのメニュー。


朝食をとりながらクリスタルピラミッド1号の改良すべき箇所をチェック。
出入り口はマジックテープで留める仕様になってましたが、何カ所も留めるのは面倒だし、グローブしたまま外したり留めたりできないよね。だから、出入り口のパネルは長めの棒ペグで雪に刺すような形状の方が使いやすいと思う。市販品のようにベンチレーションも欲しいな。夏季は虫除けのためにメッシュのスカートも欲しい。などなど、要求はエスカレートする一方だ(喜)

テープも含めてある程度の耐風性があることは検証できたし、農ポリの可能性は広がりましたねー。
マイナス15度以上でもしなやかさは全然損なわれないし、つるつるの表面はむしろ布製タープよりも霜の付着が全然少ない。そもそも吸水性ゼロで超軽量の点が魅力です。今後は谿泊まりでタープ替わりに使う人も増えそうですね。

撤収だー!

今日もいい天気だ。最高のコンディションに恵まれ一泊で帰るのがもったい気分。

左は管理人のザックで14s。真ん中はRockyさんのザックで11s。右はK海さんのザックで9s。K海さんは見事に軽量化に成功しましたね。豊富な経験と知識があるから可能なんでしょうな。


二日間とも行動中は陽が差して最高に気持ちのいい歩きとなりました。


奥武蔵の山なみ、ときおり顔を出す富士山、振り返っては八ヶ岳の主峰を眺め、真っさらな雪原に残されたアニマルトラッキングを観察しながら、山歩きを楽しみました。


車に戻ってから、二人にはスノーシューを体験してもらいました。
トレースのない雪原を歩くのも気持ちいいでしょ?

次回はスノーシューツアーを企画したいですね。


サラサラのパウダースノー、毎日でも入りたい野湯、クリスタルテントから見る満天の星空、すべてがパーフェクトな2日間でした。
次の連休も雪山で遊ぶ予定です(喜)




おしまい





<<<BACK