ヤマトの楽園2

7月5日(金)

純血のヤマトイワナを追って乗鞍の秘渓へ。2日目。


2日目。どちらともなく目を覚ましました。筋肉痛で固まった体をのばしてテントから外を覗くと、今日も渓には陽が降り注いでいます。

テン場前の渓

顔を洗おうとして水辺に歩み寄ると、慌てて逃げまどうイワナがいました。

水面を透過した陽光が川底の石の上でキラキラと光ります。

冷たい流れを両手にすくって寝ぼけた顔に浴びせてやると、徐々に昨日の興奮が甦ってきました。

顔をあげると、周囲の山波の緑が鮮やかに発光しているのが目に飛び込みます。

う〜ん、今日もいい日になりそう。


ゆっくりと朝食をすませ、テントを撤収して2日目がスタート。私もO氏も初日で釣欲が満たされたのか、たいしてロッドを振らず思い思いに遡っていきます。


今日も反応は上々。

無造作にフライを滑らせると、川底の石からヤマトが飛び出てきます。


先行するO氏に目をやると、いつもよりこころもちゆったりとしたリズムでラインを操っています。しばらくすると腕が跳ね上がり、ロッドがきれいな弧を描きました。

O氏が釣ったヤマト。

彼はこの後、ものすごく大きいヤツを掛けました。
グイグイと底に潜ろうとするのを堪えていましたが、最後は岩蔭に潜り込まれ竿がはじけてしまいました。


私の前にある淵には2匹のイワナが漂っています。しかも片方はかなりデカイ!...ティペットに傷がないかチェックして、ビートルの12番を結びます。アップクロスにフライを投じたとたんに2匹が同時に突進しました。さあ来いっ!

フライに先にたどり着いたのは小さいほう...。
でもなかなかいい引きです。
あげてみると27センチもありました。
デカイほうは何センチだったのでしょうか?


2日目の渓相は強弱と緩急が明瞭で、激しさと優しさがあります。それぞれの表情を確かめながら、渓の導きゆくままに遡っていきました。すると大滝が立ち塞がっています。

水の落下にすぎない滝が、こうも私を惹きつけるのはなぜでしょう?
魂を揺さぶる滝音。水の躍動感。弾け散る床。再び静かに流れる滴。
さらに、それらの背後には強靱な意志が潜んでいるように感じるのです。
30Mの滝の上は、桃源郷なのかもしれません。
ザイルを使って登攀しました。


滝を越えると、落ち込みと大淵が交互に現れました。淵尻にアントを流し込むと、「ズバッ」と水面が割れてフライが消えます。すかさずロッドをたてると、魚が野生を爆発させました。上流へ一気に走り、それ以上走ることがかなわないと悟ったとたんに左右へ暴れ出します。バレるなよ!と念じながら慎重に寄せにかかりましたが、魚も懸命に抗うためなかなか寄ってきてくれません。背中にはザックを背負っているためランディングネットは持ってきていない...。そこで、傾斜のゆるい場所に立ち位置を変え、何度かの攻防をした後に岸に引き上げました。

33センチのヤマト


信じがたい美しさ。
なんと形容したらいいのだろう。


その後も数匹のヤマトと戯れました。そしていよいよ脱渓の時間。地図で自分の位置を確認しましたが、稜線までは400メートル以上の高低差。等高線もびっしり寄り添っている。「ハァ」とため息が出たのは帰路の辛さを嘆いたのではなく、日常へ戻ることに対してだったのかもしれません。

脱渓は地獄!



山抜けしたガレ場を登り始め、傾斜が強まると手がかりの立木を求めて森の中へ、最後は壮絶なヤブ漕ぎを経て登山道にたどり着くまで3時間。
車まではあと何時間かかるのだろうか・・・。



JAZZ DISC REVIEW 

Herbie Hancock / Maiden Voyage

源流釣行に想いを巡らせるならこれでしょう。ハービー・ハンコックの最高傑作で邦題は「処女航海」。
大海原に船で滑り出していくようなリズムと旋律にモーダルなソロが絡み合う抒情的な表題曲は、未踏の渓を遡るときの期待と緊張を表しているようにも聴こえます。
作・編曲・即興すべてが恐ろしいほどに結合した名盤。必聴です。








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